蛍光ペンの交差点[別館]

"どの点に関心をもつべきか ―をわれわれが学びとるのは,もっぱら仮説からだけである"

パンドラと希望の箱

考えてみれば過去には風変わりなコミュニティにも所属していたように思う。 しかしどの場所にも希望はあった。 災厄が全て解き放たれたあとに、希望だけが中に残されたパンドラの箱という寓話がある*1。 パンドラの箱の通俗的な解釈は「だから、人類に希望は…

書評:"How to Fail at Almost Everything and Still Win Big"

"How to fail at almost everything and still win big" という本を読んだ。 How to Fail at Almost Everything and Still Win Big: Kind of the Story of My Life 作者: Scott Adams 出版社/メーカー: Portfolio 発売日: 2014/12/30 メディア: ペーパーバッ…

意志決定、正解、学習

Facebookの創設者による母校でのスピーチを読み、映像を見た。日本語訳はこちら。 平易な言葉で語られているが、ティールと一緒でかなりコンテキストなスピーチであり、また読み返したいと思う。 その中でひとつ印象に残る一節があった。 It's good to be id…

自動販売機と同調圧力

日本とアメリカは大きく異なる点がいくつかあるが、今日はその中でも一見ささいな、しかし象徴的な点を取り上げてみたい。 それは自動販売機である。 日本における自動販売機は、当たり前のことだが全てきちんと合理的に動く。 アメリカの自動販売機はそうで…

知識の獲得について

私は学生である。その字面が示すとおり知識の獲得を第一義とする存在である。この記事では、知識の獲得がどう促進されるのか考えてみたい。 反復する 大量の知識を取り込もうとすると、どれも1度目を通しただけで次に進んでしまいがちだが、反復は理解の基…

象を批判する:あるいは「現象の集合」と「元どうしの違い」について

とある有名なプログラミング言語の開発者が言っていた。自分の開発した言語をユーザーが語るとき、「それはどこかで、誰かにとって、いつかは真実だったのだろう」という感想を抱くと。彼はそれを群盲象を評すの挿絵を用いて説明していたが、この説明は印象…

データにならない日記

データを日常的に解析する人たちにとって、散文で書いた個人的な日記はどのような意味を持つのだろうか? データという言葉を辞書で引くと、資料、情報、証拠、事実、そのあたりの熟語が目に入るが、実のところこの使い尽くされた言葉は決定的な訳語を持って…

ONE to ZERO:敗北者ピーター・ティール

(以下の文章は、2015年2月20日に『蛍光ペンの交差点』本館に掲載したものです。) 偶然の縁があって、起業家Peter Thielの講演会に行ってきた。 ティール氏は、想像していたよりは普通の人だった。というより今までに「すごいなーなんでこんなに早く頭が回る…

学習過程においては、解決策に飛びつかない

R言語の標準であるsubset()やaggregate()によるデータの前処理は、多少込み入ってくると非常に読みにくくなる。その解決策としてパイプ演算子 %>% を用いた magrittr が存在しているが、僕は学習者にいきなりパイプ演算子 %>% を紹介するのは最善策ではない…

プログラマをプログラムできないという問題

100人ぐらいの受講者が居る計算機の授業を受けながら、ふと以下のような問題設定が考えられることに気が付いた。 クラウド構築を学ぶ授業Aはとても教育効果が高い。そのうえ、一学期に200人もの学生が技術を身につけることができて効率的だ。履修後に…

完全な意志決定など待ってられるか、あるいは意志への満足

自分の人生をふと振り返ってみると、数年間隔で「その後の人生を大きく変えるような決断」をいくつか重ねてきたことに気付く。 同時に驚かされるのは、そのどれに関しても、とても誇れるような決断の仕方ではなかったということだ。ある決断は見栄や私利に、…

言語は私たちのツールか、それとも私たちもツールなのか

言語は目的を達成するためのツールである。では私たち人間はツールではないのだろうか? 日本では高等教育まで夢を見て、高等教育から社会人前期に生計を確保しあるいは行動の原動力を確保し、一部は中盤から自己実現をはかる幸運に恵まれ、少数はそれを超え…

ズレに対する2種の賢さ

知性と呼ばれるものがある。賢さ、地頭、センスなどとも呼ばれる。 試験で測られる賢さは、最低点を超えていれば賢い。あるいは順位が高いほど賢い。 他人が判断する類の賢さは、期待を超えていれば賢い。知らなければ大抵賢いとなる。 ダメージに気づかない…

歩き出す前に見えた地平線がおぼろげな様を、どうかずっと覚えておこう

明後日から違う街に住む。 生きていることの楽しさは、まったく新しい世界に飛び込んで、望んでいたものを狙い通りに得ることや、あるいは関わりたくなかった面倒事に巻き込まれることや、予想外の喜びに遭遇して立ち尽くすなかにあると思う。上京したときや…

思考の歯磨き

内田樹は批判されることも多いが、彼の『日本辺境論』を読んだ時にとても腑に落ちて、そのまま今でも覚えている一つの主張がある。それは、本書の主張はこれまで別のところでも散々言われてきたことで何の目新しさもないが、歯磨きのように定期的に見直すこ…

命令で済むということ

仕事の遂行が命令で済むというのは面白い。プログラミングの話である。プログラムは事細かに指定された命令の並びであり、予期通りの結果を一度正しく生じさせたプログラムは疲れ知らずの有能な働き手となる。 同じ結果を再現といえど無論、実際は占有やら老…

やりたいことはありますか

人生でやりたいことが明確に決まっている、というと大なり小なり驚かれることが多い。僕の世代の人々は学生であれ社会人であれ自分のやりたいことを持っていない人が多いからだろう。 ただ残念ながら僕は子どものときから一つの夢を追いかけているようなビリ…

書くということ

僕にとって文章を書くことは、僕のなかでの重要な意味を持っている。高校のときからブログへの投稿数で数えれば1000以上の文章を書いてきた。 アウトプット(生成物)であることは間違いない。外に対して自分が感じた何かを表現したり、あるいは「こいつ…

プログラミング学習の論点が変わるとき

昔はいろんな言語に手を出していた。C++から始まって、Java、Ruby、Python、C、HTML、CSS、JavaScript、PHPなどのポピュラーなものから、LISP、Haskell、OCaml、R言語などの比較的マイナーなものまで。 しかし最近はめっきりC++とR言語以外は使わなくなった…

受験と学問と研究は本当に違うゲームなのか?(かきかけ)

―― 本日は、東大を卒業されている先生に東大新入生に向けてのアドバイスをお話しいただきたいです。 瀧本 まず受験と大学生活、就活は非連続であるという前提を知る必要があります。大学入試というのは採点しやすいように答えが一意に決まっていて、時間をか…

原理、分類、思考

原理に基いて思考するとはどういうことかを試してみたくなった。 「消費者は最安の商品を買う」という原理があったとする。まず第一に大事なのは、この原理に限らず多くの原理は集合名(集合setの名前)であって、中身がいくつ入っているかが大事だ、というこ…

正論とプロセス

まさにその職務に最適としか思えない人が、正論を展開する様子を見ていた。 正論を展開する。 正論を展開する。 正論を展開する。 …。 おかしい。終わらない。 言及されていることは、あとで別の情報源から確認したところ恐らくどれも真実で、解決すべき課題…

一読すべき企業分析がここにある:『進め!!ブラック企業探偵団』書評

進め!! 東大ブラック企業探偵団 作者: 大熊将八 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/02/24 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る この本は、就活本として異色である。 だが就活生に限らず、既に働いている社会人にとっても読む価…

あなたはどうあんぱんを買うか:問題解決のケーススタディ

「おーい、あんぱん買ってきてー」 広告代理店のAくんの場合:(生協の購買部に着いて)「うーん、この棚は取れてないか。仕方ない、別の店を探そう」 大手ネットベンチャーのBさんの場合:「まずメンバー全員のスケジュールをシェアして公平にアサインしよ…

アルゴリズムはどのように何をしたいのか:豊かさについて

アルゴリズムとは、機械にも実行可能なぐらい明確に表現された作業手順のことである。その手順さえ実行すれば、目的とする何かが達成される。 その目的は、「病院の待合室で待っている人のうち、次に診察室に呼ぶ人を決めること」だったり、「布団 クリーニ…

プログラムと恐怖

プログラミングを始めて約3年が経ち、少し考えることがあった。 学ぶことが本質的に困難なプログラミングとは、どのようなものだろう?あるいは、いつまでも怖いプログラミングは、どのようなものだろう? プログラミングを習うというと、以下のようなこと…

価値観について

人の話を聞いたときに、賛成したい気持ちと反対したい気持ちがほぼ同時に発生することが増えた。異なる価値観が同居していると言い換えてもいい。 たとえば、コンサルタントとして就職したい、と友人Aから聞いたとする。「いや、かつて戦略コンサルがイケイ…

2015年度紅白歌合戦の出場年齢層は14年前と比べて若返ったか?

昨日は久しぶりに紅白歌合戦を見ていたのだが、おや?と感じた。 なんだか子どものときに見ていた紅白に比べて、知っている歌手が多い気がする。 ♪ 僕の身体が昔より 大人になったからなのか と徳永英明風に無視してもよいものだが、何だか気になった。年末…

『戦略がすべて』第5節の感想:最適戦略とプレイスタイルから見える性格

『戦略がすべて』を少しずつ読み進めている。 前回書いた第4節(単なる熟達ではない要因によって可能になる高額報酬について)に続く第5節では、実はロールプレイングゲームのなかに適切な経営戦略のヒントが隠れていると論じられている。 僕はゲームの非…

数学って役に立つの?に対する試論

中学や高校で、2次方程式やら確率やら対数関数やら学んできたけど、こんなこと学んで意味があるの?いい会社に入るためのスキルセットとか、相手を説得するための話法とか、実学を学んだほうがいいんじゃないの? 明確には表明しないだけで、数学が苦手な人…

『戦略がすべて』第2章感想、あるいは分析者は儲ける仕組みに関われるか

これは、まだまだ試論である。 「4. 「儲ける仕組み」を手に入れる ーー スター俳優の方程式」の感想 大ヒット漫画原作者はなぜ映画の原作者としては高給を提供されないのかを契機として、報酬額の決定要因を追究した章である。 先日、数年前にベンチャーを…

知能とは何だろう

知能の定義について Intelligence is really not going to be something that we ever succeed in defining in a succinct and singular way. It's really this whole constellation of different capabilities that, um, you know, all kind of, are beauti…

專攻分野が決まらない高校生への計算機科学のすすめ

この記事は、「自分が気になることは、どの学問も同じくらい扱っている気がして、專攻を決められない」と悩んでいる高校3年生の男の子と話した内容を基に書かれました。 とても長いので、1回で読み切ろうとしないほうが良いかもしれません。 ポイントを4つ…

この単語を2年間忘れないでいられるだろうか?: 学校が教えてくれない英単語の暗記法について

(この記事は、科学的な発見ではなく、僕が英語学習者として採用している現実的な戦略について記述しています。そのため各所が雑ですが、この程度の雑さでも高校での暗記戦略を遥かに凌駕していることが何より重要なことだと思います。僕はこの雑な戦略を2…

プログラミング初心者にとってなぜ入門書は難しいのか

ソフトウェアの世界は、日進月歩である。 いや、その慣用句すら生ぬるい。 1日は24時間だ。Webアプリケーションフレームワークとして有名なRuby on Railsは、多い日で一日あたり12回の修正が加えられている。この単純な事実を2つ合わせると、ソフトウェアの…

すーがくってなんだろう

いくつか気になったものをメモメモ 古い時代の数学では「空間」は日常生活において観察される三次元空間の幾何学的抽象化であった。ユークリッド(紀元前300年頃)以来、公理的手法を主要な道具とした研究が行われていた。デカルトにより、座標を用いる方法…

Power Lawと明確な楽観主義、あるいは「成功」の考察

Paypal共同創業者の一人、ピーター・ティールによるビジネス書『ゼロトゥワン』の中では、第6章で「テクノロジーに対する明確な楽観主義」、第7章で「ビジネスにおけるべき乗則(Power Law)」が扱われる。 明確な楽観主義は、「思い描いた未来を築けば成…

次元の呪い、あるいは「サクサクメロンパン問題」

超球の体積、すなわち多次元空間における球は、一般的に私たちが観測する3次元の球体の体積とは遥かに異質な性質を示すらしい。 機械学習の有名な教科書によれば、 Our geometrical intuitions, formed through a life spent in a space of three dimension…

p値とAIC(赤池情報量基準)の関係について

現段階での理解をまとめる。 間違った記述があれば、読者諸氏からのご指摘を頂きたい。 (p値を使うNeyman-Pearsonの)検定によるモデル選択と、AICによるモデル選択を比較した図として、管見では以下が最も整理されていた。薄緑の付箋と黄色のハイライトは私…

東京大学は二流の大学である

(この記事は、以下の大学職員の呟きに触発されて書いている。) 地方国立大学が、低学費、低コストで教育格差の解消に役立っているとしたら、「地方都市」たる東京の、東京大学も世界観帝国の文脈では、同じ文脈にあると考えられるでしょう。 — 瀧本哲史bot…

アルゴリズムとビジネス(2つの「高度な技術」)

CS50の授業を3本ほど見て、思うところがあった。 以下の2つの命題は、それぞれ正しいか、誤っているか? 1) 高度なアルゴリズムほど(適用できる人が少ないから)価値がある 2) 問題を解決できれば高度でなくてもアルゴリズムには価値がある 僕の現段階…

本年度のビジネス書大賞を受賞した『ゼロトゥワン』を何故あらゆるビジネスマンが読むべきか

本年度のビジネス書大賞受賞作は、シリコンバレーの起業家、ピーター・ティールによる著作『ゼロトゥワン』だった。 ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか 作者: ピーター・ティール,ブレイク・マスターズ 出版社/メーカー: NHK出版 発売日: 2014/…

統計を始めたい人に僕がPythonよりRを勧める理由

今回は「ほぼRしか使ったことがない」人間*1が、できる限り二者の優劣をくっきり述べる。 僕はほとんどRしか使ったことがない。Pythonはtfidfやクイックソートをライブラリ無しで実装した程度。 前半の主張は以下である。 「過去のRでの10回程度の解析…

ニコ動で「もっと評価されるべき」約4900作品の説明文を解析してみた

2年ほど前に、「もっと評価されるべき」タグが付いた動画の投稿だけをTwitterに流すBotを作っていたことがある。つい昨日、もう少しでデータベースが満杯になるから、データを消去しろと通知が来た。 せっかくなので、呟いていたデータを解析してみよう。デ…

推論機構と真実 (3) 既知、洞察、未知の計算量に潜むPower Law

推論機構と真実 (2) 「バカ」のモデル化の可能性と意義

以前の記事(「推論機構と真実 (1)隠れたバグか、隠れた真実か」)で述べたことを、誰もが生きる上で避けられない大問題に即して考えてみる。それは、「バカ」のモデル化である。経済学は、「合理的な行動をする主体」として、人間や投資アルゴリズムを定式化…

推論機構と真実

自分の学部時代の経験において、ひとつ忘れられない出来事がある。 その日は所属学科の卒論発表会だった。発表者が準備を済ませ、発表時間になった段階でも、卒論審査役の一人の教授が場に現れない。 発表者の指導教授が電話すると、彼はまだ研究室に居た。…

価値観の共同体:大学と企業の違い

最近考えたことを書きつけておく。 大学と企業の最も顕著な違いは何だろうか? 大学の最大目的は新知識の創造で、企業の最大目的は利益追求だ。 もちろんどちらもそれだけではないけれど、例えば大学は新知識の創造には至らずとも体系だった知識をほぼ自力で…

Raschモデルに関する覚書

Raschモデルは項目応答理論で扱われる最も単純なモデルの一つ Raschモデルは、形式的には(一般化線形モデルのうち)ロジスティック回帰の一例にすぎない 「人それぞれ(の能力)」を表すパラメタ1つと、nコの問いについて「問いそれぞれ(の難しさ)」を表すn…

Wikipediaの「標準誤差」の編集履歴を追ってみた

この式で重要なのは、標準誤差は抽出する標本サイズの平方根に反比例するという点である。つまり、例えば標本サイズを4倍にすると標準誤差を半分にできる。統計調査を計画する際に、費用や手間をある範囲内に収めた上で誤差を最小にしたい場合が多い。これら…