蛍光ペンの交差点[別館]

"どの点に関心をもつべきか ―をわれわれが学びとるのは,もっぱら仮説からだけである"

文字と「跡」、あるいはデータと呼ばれるもの

文字は「今、ここ」を離れて行なう観察のゲーム・チェンジャーだった。そして今現代に起きていることはデータによる二次革命である。映画においては続編は前作より低評価になることが常だが、果たして技術においてはどうだろうか。 私たちは、文字で現象をほ…

泉に近いところへ:信号と感受性

「泉に近いところへ行きたい」という自己の深層からの欲求を自覚したのは、オンラインの講義動画を丸ビルの日当たりの良い喫茶店で視聴していたときだったと思う。東京が源泉になっているような現地組織に、あまり出会うことができていなかった。ましてや、…

21世紀を生きてみて:生産性と仲良くする

歯磨きのような思考で述べたように、同じ話を何度も何度も何度も何度も何度も考えることには時に大切な意義がある。今回の話は、内容的には2年前に書いた專攻分野が決まらない高校生への計算機科学のすすめを一般化したものになる。 私はこれまで、多くの人…

学ぶことは楽しいことではない:学び続けるスキルとは何か

私は、一般に吹聴される「学ぶことは本来、楽しいことだ」という主張は誤っていると思っている。 たとえば英語を始めたとする。最初は英会話にせよニュース購読にせよ、新鮮な気持ちで読めるから楽しいと感じるだろう。だが活動がパターン化していく中で、あ…

自信を失った時の癖

人生で群を抜いて不安だったときと言えば、浪人で予備校にフルタイムで通っていたときだろう。合格最低点に0.4点だけ足りず始まった浪人生活。次の失敗は、どのような理由があったとしても存在してはいけなかった。 授業を終えるとよくそのことが頭を過ぎっ…

パンドラと希望の箱

考えてみれば過去には風変わりなコミュニティにも所属していたように思う。 しかしどの場所にも希望はあった。 災厄が全て解き放たれたあとに、希望だけが中に残されたパンドラの箱という寓話がある*1。 パンドラの箱の通俗的な解釈は「だから、人類に希望は…

書評:"How to Fail at Almost Everything and Still Win Big"

"How to fail at almost everything and still win big" という本を読んだ。 How to Fail at Almost Everything and Still Win Big: Kind of the Story of My Life 作者: Scott Adams 出版社/メーカー: Portfolio 発売日: 2014/12/30 メディア: ペーパーバッ…

意志決定、正解、学習

Facebookの創設者による母校でのスピーチを読み、映像を見た。日本語訳はこちら。 平易な言葉で語られているが、ティールと一緒でかなりコンテキストなスピーチであり、また読み返したいと思う。 その中でひとつ印象に残る一節があった。 It's good to be id…

自動販売機と同調圧力

日本とアメリカは大きく異なる点がいくつかあるが、今日はその中でも一見ささいな、しかし象徴的な点を取り上げてみたい。 それは自動販売機である。 日本における自動販売機は、当たり前のことだが全てきちんと合理的に動く。 アメリカの自動販売機はそうで…

知識の獲得について

私は学生である。その字面が示すとおり知識の獲得を第一義とする存在である。この記事では、知識の獲得がどう促進されるのか考えてみたい。 反復する 大量の知識を取り込もうとすると、どれも1度目を通しただけで次に進んでしまいがちだが、反復は理解の基…

象を批判する:あるいは「現象の集合」と「元どうしの違い」について

とある有名なプログラミング言語の開発者が言っていた。自分の開発した言語をユーザーが語るとき、「それはどこかで、誰かにとって、いつかは真実だったのだろう」という感想を抱くと。彼はそれを群盲象を評すの挿絵を用いて説明していたが、この説明は印象…

データにならない日記

データを日常的に解析する人たちにとって、散文で書いた個人的な日記はどのような意味を持つのだろうか? データという言葉を辞書で引くと、資料、情報、証拠、事実、そのあたりの熟語が目に入るが、実のところこの使い尽くされた言葉は決定的な訳語を持って…

ONE to ZERO:敗北者ピーター・ティール

(以下の文章は、2015年2月20日に『蛍光ペンの交差点』本館に掲載したものです。) 偶然の縁があって、起業家Peter Thielの講演会に行ってきた。 ティール氏は、想像していたよりは普通の人だった。というより今までに「すごいなーなんでこんなに早く頭が回る…

学習過程においては、解決策に飛びつかない

R言語の標準であるsubset()やaggregate()によるデータの前処理は、多少込み入ってくると非常に読みにくくなる。その解決策としてパイプ演算子 %>% を用いた magrittr が存在しているが、僕は学習者にいきなりパイプ演算子 %>% を紹介するのは最善策ではない…

プログラマをプログラムできないという問題

100人ぐらいの受講者が居る計算機の授業を受けながら、ふと以下のような問題設定が考えられることに気が付いた。 クラウド構築を学ぶ授業Aはとても教育効果が高い。そのうえ、一学期に200人もの学生が技術を身につけることができて効率的だ。履修後に…

完全な意志決定など待ってられるか、あるいは意志への満足

自分の人生をふと振り返ってみると、数年間隔で「その後の人生を大きく変えるような決断」をいくつか重ねてきたことに気付く。 同時に驚かされるのは、そのどれに関しても、とても誇れるような決断の仕方ではなかったということだ。ある決断は見栄や私利に、…

言語は私たちのツールか、それとも私たちもツールなのか

言語は目的を達成するためのツールである。では私たち人間はツールではないのだろうか? 日本では高等教育まで夢を見て、高等教育から社会人前期に生計を確保しあるいは行動の原動力を確保し、一部は中盤から自己実現をはかる幸運に恵まれ、少数はそれを超え…

ズレに対する2種の賢さ

知性と呼ばれるものがある。賢さ、地頭、センスなどとも呼ばれる。 試験で測られる賢さは、最低点を超えていれば賢い。あるいは順位が高いほど賢い。 他人が判断する類の賢さは、期待を超えていれば賢い。知らなければ大抵賢いとなる。 ダメージに気づかない…

歩き出す前に見えた地平線がおぼろげな様を、どうかずっと覚えておこう

明後日から違う街に住む。 生きていることの楽しさは、まったく新しい世界に飛び込んで、望んでいたものを狙い通りに得ることや、あるいは関わりたくなかった面倒事に巻き込まれることや、予想外の喜びに遭遇して立ち尽くすなかにあると思う。上京したときや…

思考の歯磨き

内田樹は批判されることも多いが、彼の『日本辺境論』を読んだ時にとても腑に落ちて、そのまま今でも覚えている一つの主張がある。それは、本書の主張はこれまで別のところでも散々言われてきたことで何の目新しさもないが、歯磨きのように定期的に見直すこ…

命令で済むということ

仕事の遂行が命令で済むというのは面白い。プログラミングの話である。プログラムは事細かに指定された命令の並びであり、予期通りの結果を一度正しく生じさせたプログラムは疲れ知らずの有能な働き手となる。 同じ結果を再現といえど無論、実際は占有やら老…

やりたいことはありますか

人生でやりたいことが明確に決まっている、というと大なり小なり驚かれることが多い。僕の世代の人々は学生であれ社会人であれ自分のやりたいことを持っていない人が多いからだろう。 ただ残念ながら僕は子どものときから一つの夢を追いかけているようなビリ…

書くということ

僕にとって文章を書くことは、僕のなかでの重要な意味を持っている。高校のときからブログへの投稿数で数えれば1000以上の文章を書いてきた。 アウトプット(生成物)であることは間違いない。外に対して自分が感じた何かを表現したり、あるいは「こいつ…

プログラミング学習の論点が変わるとき

昔はいろんな言語に手を出していた。C++から始まって、Java、Ruby、Python、C、HTML、CSS、JavaScript、PHPなどのポピュラーなものから、LISP、Haskell、OCaml、R言語などの比較的マイナーなものまで。 しかし最近はめっきりC++とR言語以外は使わなくなった…

受験と学問と研究は本当に違うゲームなのか?(かきかけ)

―― 本日は、東大を卒業されている先生に東大新入生に向けてのアドバイスをお話しいただきたいです。 瀧本 まず受験と大学生活、就活は非連続であるという前提を知る必要があります。大学入試というのは採点しやすいように答えが一意に決まっていて、時間をか…

原理、分類、思考

原理に基いて思考するとはどういうことかを試してみたくなった。 「消費者は最安の商品を買う」という原理があったとする。まず第一に大事なのは、この原理に限らず多くの原理は集合名(集合setの名前)であって、中身がいくつ入っているかが大事だ、というこ…

正論とプロセス

まさにその職務に最適としか思えない人が、正論を展開する様子を見ていた。 正論を展開する。 正論を展開する。 正論を展開する。 …。 おかしい。終わらない。 言及されていることは、あとで別の情報源から確認したところ恐らくどれも真実で、解決すべき課題…

一読すべき企業分析がここにある:『進め!!ブラック企業探偵団』書評

進め!! 東大ブラック企業探偵団 作者: 大熊将八 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/02/24 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る この本は、就活本として異色である。 だが就活生に限らず、既に働いている社会人にとっても読む価…

あなたはどうあんぱんを買うか:問題解決のケーススタディ

「おーい、あんぱん買ってきてー」 広告代理店のAくんの場合:(生協の購買部に着いて)「うーん、この棚は取れてないか。仕方ない、別の店を探そう」 大手ネットベンチャーのBさんの場合:「まずメンバー全員のスケジュールをシェアして公平にアサインしよ…

アルゴリズムはどのように何をしたいのか:豊かさについて

アルゴリズムとは、機械にも実行可能なぐらい明確に表現された作業手順のことである。その手順さえ実行すれば、目的とする何かが達成される。 その目的は、「病院の待合室で待っている人のうち、次に診察室に呼ぶ人を決めること」だったり、「布団 クリーニ…