昨日は久しぶりに紅白歌合戦を見ていたのだが、おや?と感じた。
なんだか子どものときに見ていた紅白に比べて、知っている歌手が多い気がする。
♪ 僕の身体が昔より 大人になったからなのか と徳永英明風に無視してもよいものだが、何だか気になった。年末は掃除やら何やらでいつもバタバタしているので、僕が最後に紅白をまともに見たのは恐らく小学生か中学生のころ。つまりいまから10数年くらい前だ。
紅白は10数年前から何が変わったのか。
第53回(2002年)において、番組側は「日本音楽界の総決算」をテーマを掲げ、出場歌手・曲目の多ジャンル化を決行[76]。第52回(2001年)まで常連だった演歌歌手が次々に落選となり、同回以降、演歌歌手の出演数が従来の半分以下になった[77]。NHK関係者は「出場歌手別に視聴率を調査すると演歌の時が目立って下がる。止むを得ない」と語っている[78]。
( NHK紅白歌合戦 より引用、強調は僕によるもの)
とのことだ。
今年の出場者陣を改めて見てみると、氷川きよし(38歳)や山内惠介(32歳)など若手の演歌歌手は確かに残っているし、常連の演歌歌手の名前もチラチラ見えるのだが、確かに子どものときに比べて(僕にとっては退屈な)演歌の時間が減った気がする。
興味を持ったので、分析してみた。対象としたのは、上記Wikipediaによると「演歌歌手を減らす前」だった2001年の紅白出場者と、今年2015年の紅白出場者の年齢である。
紅白歌合戦は、60年続くだけあって、紅白歌合戦データベースなんてサイトがあるぐらいファンが多い番組のようだが、このデータベースサイトにも「出場者の年齢変化」を扱っている様子はない。60秒に及ぶ綿密で網羅的なGoogle検索の結果、ひとつだけ先行研究を見つけたが、2015年の出場者のみであり比較ではない。
紅白出場者の年齢がどのように分布しているのかは、あまり調べられていないようだ。なので、2015年のデータについては先行研究のデータを参考にし、2001年についてはWikipediaで大体の推定値を入力した。
グループアーティストについてはボーカルの年齢を、全員がボーカルのアイドルグループについてはWikipediaで目についたメンバーの年齢を代表値として入力した。
その結果、得られたのが以下の出場世代分布図だ。
なんと、出場者の平均年齢は14年経っても1歳ぶんも変動していない。
これは美輪明宏(80歳)が初出場で最年長だったからではなく、むしろ美輪を抜くと2015年の平均値は39.9となり2001年と0.1歳差に迫る。
しかしグラフからは平均年齢は変わっていなくても分布の中身がかなり変わっている印象を受ける。紅白の出場者は2001年が54団体、2015年が52団体で大差ないが、30代の出場歌手が激増している(8団体→18団体)。その代わりに減ったのは40〜50代であり、28団体から13団体まで減っている。つまり、平均年齢が一致したのは単なる偶然だと言えるだろう。おそらくこの分布は最頻値 mode や中央値 median で解析するべき特質を持っている統計データなのだ。紅白がどういう思想で作られている番組なのかは寡聞にして知らないが、最頻値が「コンテンツの中心となる歌手陣の世代層」、中央値が「平均の年齢」とみなしてよいのではないだろうか。中央値は01年で43歳、15年で37歳である。
個別に見ていくと、同じ50代のソングでも主要ジャンルが変化しているような気もする。僕はあまり歌手に詳しくないので全員について言及することはできないが、少なくとも今井美樹・徳永英明・X JAPANが歌うのは演歌ではないことは分かるし、というかヨシキはピアノ弾いてたし、松田聖子が歌っているのは『赤いスイートピー』だ。 ♪ 春色の汽車に乗って 海に連れていってよ…。同じ世代層と言っても、もはやコンテンツの特質が異なるということか。
30代はゆず・TOKIO・SMAP・椎名林檎・EXILEなどなど10代後半の若者〜30代(?)に受けそうなグループが参戦しており、38歳ーーここが2015年の分布のピークであることは興味深い。2001年のピーク(最頻値 mode )は51歳だったのである*1
高齢化社会の中で、なぜか紅白の出場者は若返っているのだ。
そして、60代での出場者も増えている(3人→6人)。2015年は2001年より出場組数が少ないのにだ。ちなみに小林幸子(62歳)は特別枠での出場だったので2015年の統計から外しているため、彼女を入れると7人、すなわち2.3倍になる。
ところで、なぜ01年のほうが最年少出場者が若いの?と思う人もいるかもしれない。ザッと調べたところ、労働基準法に抵触する恐れがあるため自主規制をしているようだ。
出場順をヨコ軸、年齢をタテ軸に取ると、上のグラフのように、およそ22:00前で18歳以下の出場者が消えることが分かる(今年のNMB48は大丈夫だったのだろうか?あまりよくわからない)。また、2001年は後半の10人全員が40歳以上という特殊な現象が生じている。
その10人の曲目を出場が早いものから並べてみると以下のようになる。
美川憲一 「恋女」
石川さゆり 「涙つづり」
川中美幸 「大河の流れ」
さだまさし 「きみを忘れない~タイムカプセル~」
天童よしみ 「春が来た」
五木ひろし 「逢いたかったぜ」
和田アキ子 「夢」
北島三郎 「山」
これは若者には厳しい布陣…!!!
やはり、2001年はクライマックスに演歌系で盛り上げるという特殊な傾向があったようだ。
まとめ
- 01年と15年の紅白出場者の年齢を比較することで、日本の年末定番番組のコンテンツの変質を追った。
- 同じ50代のソングと言ってもジャンルが異なる傾向にあることが示唆された。
- 出場者の年齢分布の最頻値が50代から30代に移ったことを確認した。中央値は43から37に変遷した。
- 若い人は前半でほとんど切り上げるのかもしれない。
個人的な感想
同じ番組とはいえ、製作方針がかなり変わっている印象を受けた。小林幸子がコメント弾幕のなか千本桜を歌うのは、演歌とは違う向きでの生存を狙ったイノベーション戦略だろうし、まあぶっちゃけ普通に見ていて面白かった。
来年も見ることにして、楽しみにしていよう。
使用したデータはこちらです。
紅白ファンの方、年齢のデータなどおかしい点などあればぜひ指摘お願いいたします
*1:同率で24歳もピークである。