蛍光ペンの交差点

"科学と技術に支えられ、夢を語る人になる"

2017-01-01から1年間の記事一覧

効率的な情報の摂取について(1):recallをrecallしない調査戦略

日々接する情報は多すぎる上に、まだ増加している。そのような情報過多(information overload)の問題に対して、precisionとrecallという2つの概念を参考に戦略を立ててみよう。 (画像:英Wikipediaの"Precision and Recall"より転載) Precisionとrecallは、…

時々休んで語らいながら、それでも遠くへ歩いていこう

自分の中には異なる2つの主義(principles、行動の指針)がある。長期間の存在を確認した。「なんでもいいから成果だけ手に入ればいい」(outcome goal) という主義と、それが崩れたときに現れる「積み上げてきたことを出し切って運命に委ねたい」(process goa…

計算と走る

およそ基礎と言われる単元の学習を終えると、第二言語学習者は「英語を学ぶのではない、英語で学ぶのだ」などの助言を受けることが多い。この一文が興味深いのは、自然言語において日陰者と思われがちな助詞(particles)が主役となって、あらゆる学習者が十数…

文字と「跡」、あるいはデータと呼ばれるもの

文字は「今、ここ」を離れて行なう観察のゲーム・チェンジャーだった。そして今現代に起きていることはデータによる二次革命である。映画においては続編は前作より低評価になることが常だが、果たして技術においてはどうだろうか。 私たちは、文字で現象をほ…

泉に近いところへ:信号と感受性

「泉に近いところへ行きたい」という渇望を自覚したのは、オンラインの講義動画を丸ビルの喫茶店で視聴していたときだったと思う。東京が源泉になっているような現地組織に、あまり出会うことができていなかった。ましてや、自分が興味のある活動分野の源泉…

21世紀を生きてみて:生産性と仲良くする

歯磨きのような思考で述べたように、同じ話を何度も何度も何度も何度も何度も考えることには時に大切な意義がある。今回の話は、内容的には2年前に書いた專攻分野が決まらない高校生への計算機科学のすすめを一般化したものになる。 私はこれまで、多くの人…

学ぶことは楽しいことではない:学び続けるスキルとは何か

私は、一般に吹聴される「学ぶことは本来、楽しいことだ」という主張は誤っていると思っている。 たとえば英語を始めたとする。最初は英会話にせよニュース購読にせよ、新鮮な気持ちで読めるから楽しいと感じるだろう。だが活動がパターン化していく中で、あ…

自信を失った時の癖

人生で群を抜いて不安だったときと言えば、浪人で予備校にフルタイムで通っていたときだろう。合格最低点に0.4点だけ足りず始まった浪人生活。次の失敗は、どのような理由があったとしても存在してはいけなかった。 授業を終えるとよくそのことが頭を過ぎっ…

パンドラと希望の箱

考えてみれば過去には風変わりなコミュニティにも所属していたように思う。 しかしどの場所にも希望はあった。 災厄が全て解き放たれたあとに、希望だけが中に残されたパンドラの箱という寓話がある*1。 パンドラの箱の通俗的な解釈は「だから、人類に希望は…

意志決定、正解、学習

Facebookの創設者による母校でのスピーチを読み、映像を見た。日本語訳はこちら。 平易な言葉で語られているが、ティールと一緒でかなりコンテキストなスピーチであり、また読み返したいと思う。 その中でひとつ印象に残る一節があった。 It's good to be id…

自動販売機と同調圧力

日本とアメリカは大きく異なる点がいくつかあるが、今日はその中でも一見ささいな、しかし象徴的な点を取り上げてみたい。 それは自動販売機である。 日本における自動販売機は、当たり前のことだが全てきちんと合理的に動く。 アメリカの自動販売機はそうで…

知識の獲得について

私は学生である。その字面が示すとおり知識の獲得を第一義とする存在である。この記事では、知識の獲得がどう促進されるのか考えてみたい。 反復する 大量の知識を取り込もうとすると、どれも1度目を通しただけで次に進んでしまいがちだが、反復は理解の基…

象を批判する:あるいは「現象の集合」と「元どうしの違い」について

とある有名なプログラミング言語の開発者が言っていた。自分の開発した言語をユーザーが語るとき、「それはどこかで、誰かにとって、いつかは真実だったのだろう」という感想を抱くと。彼はそれを群盲象を評すの挿絵を用いて説明していたが、この説明は印象…

データにならない日記

データを日常的に解析する人たちにとって、散文で書いた個人的な日記はどのような意味を持つのだろうか? データという言葉を辞書で引くと、資料、情報、証拠、事実、そのあたりの熟語が目に入るが、実のところこの使い尽くされた言葉は決定的な訳語を持って…

ONE to ZERO:敗北者ピーター・ティール

(以下の文章は、2015年2月20日に『蛍光ペンの交差点』本館に掲載したものです。) 偶然の縁があって、起業家Peter Thielの講演会に行ってきた。 ティール氏は、想像していたよりは普通の人だった。というより今までに「すごいなーなんでこんなに早く頭が回る…